「痩せているのに、なぜか痩せない」
そんな矛盾した感覚を、あなたは感じたことはありませんか?
食事量は増えていない。むしろ昔より気をつけている。
それなのに、体重は動かない。ダイエットをすると、すぐに止まる。
わたしのもとにも、こんな声がたくさん届きます。
「基礎代謝が低い体質なんだと思います」
「もう年齢的に仕方ないですよね…」
でも、最初にお伝えしたいことがあります。
痩せないのは、あなたの意志が弱いからではありません。
体はただ、あなたを守ろうとしているだけ。
この記事では、
「基礎代謝が低い=太りやすい」という誤解をやさしくほどきながら、
痩せている人ほど代謝が落ちてしまう理由と、
そこから「痩せ始める体」へ戻す考え方をお伝えします。
基礎代謝が低い=太りやすい、は本当?
まず、ここで一度立ち止まって、
「基礎代謝」という言葉の正体を一緒に整理してみましょう。
基礎代謝とは、
呼吸・心拍・体温維持など、
生きているだけで消費されるエネルギーのこと。
私たちが寝ていても、
何もしていないように見える時間でも、
体はずっと働き続けています。
そしてこの基礎代謝は、
1日の消費エネルギーの約60〜70%を占めると言われています。
この数字だけを見ると、
「基礎代謝が低いと太りやすい」
「基礎代謝が高ければ痩せる」
「基礎代謝だけで、痩せる・痩せないが決まる」
そう思ってしまうのも、正直とても自然なことだと思います。
実際、わたし自身も過去はそう信じていましたし、
サロンや講座でお会いする女性たちも、
ほとんどの方がここで自分を責めています。
「代謝が悪い体質だから仕方ないですよね」
「若い頃から痩せにくかったんです」
でも、長年たくさんの体を見てきて、
そして栄養・代謝・腸の知識を深めてきた今、
わたしははっきり言えます。
体重や体型と、基礎代謝は単純に比例しません。
実際、米国の医療機関であるCleveland Clinicでも、
基礎代謝は体重だけで決まるものではなく、筋肉量・年齢・ホルモン・栄養状態など複数の要因に左右されると明記されています。
✔ 体重が軽くても基礎代謝が低い人
✔ 体重があっても基礎代謝がきちんと保たれている人
この2タイプは、実際にどちらも存在します。
「痩せているから代謝が高いはず」
「太りやすいのは代謝が低いから」
こうした考え方は、
とてもわかりやすいけれど、現実はもっと繊細です。
基礎代謝は、
体重そのものではなく、
- 筋肉量
- 内臓の元気さ
- 栄養状態
- ホルモンバランス
- そして腸の状態
こうした「体の中の環境」に強く影響されます。
だからこそ、
基礎代謝だけで痩せることはできない。
でも、基礎代謝を壊してしまうと、痩せなくなる。
この2つは、まったく別の話。
そして、多くのダイエットがうまくいかなくなる理由は、
「代謝を上げようとしている」のではなく、
「知らないうちに代謝を削っている」ところにあります。
これは意志の問題でも、努力不足でもありません。
ただ、仕組みを知らなかっただけ。
だからこの記事では、
「基礎代謝が低いから痩せない」という思い込みを手放して、
体がもう一度、自然に痩せ始めるための考え方を、
順番にお伝えしていきます。
なぜ痩せてる人ほど基礎代謝が低いことがあるの?
① 筋肉量が少ないと、代謝は静かに下がる
まずお伝えしたいのは、
「細い=代謝がいい」というイメージは、必ずしも正しくないということです。
基礎代謝を決める最大の要素は、
体重そのものではなく「除脂肪量」です。
除脂肪量とは、筋肉・内臓・骨など、
エネルギーを使って働いてくれる組織の総量のこと。
実際、PubMedに掲載されている代謝研究でも、
基礎代謝量は体脂肪よりも「除脂肪量(筋肉量など)」との関連が最も強いことが示されています。
わたしがこれまで、
美容の現場やファスティング指導で多くの女性の体を見てきて感じるのは、
「痩せている人ほど、実は筋肉がとても少ない」ケースが本当に多い、ということです。
見た目は細く、体重も軽い。
だから「代謝は悪くないはず」と思っている。
でも実際には、
体を内側から支えている筋肉が少なく、
エネルギーを燃やす力そのものが弱くなっていることがあります。
その結果、
✔ 食べていないのに体重が落ちない
✔ ダイエットをするとすぐ停滞する
✔ 少し食べるとすぐ戻る
こんな状態が起こりやすくなるのです。
「痩せている=代謝が高い」
これは、実はとても多くの人が信じてしまっている誤解。
特に、
- 運動習慣がほとんどない
- 若い頃から食事量を抑えるクセがある
- 長年カロリー制限をしてきた
- タンパク質を意識してこなかった
こうした背景がある人ほど、
「細いのに、代謝が低い体」になりやすい傾向があります。
ここで大切なのは、
自分を責めないこと。
筋肉が少ないのは、
サボっていたからでも、怠けていたからでもありません。
多くの場合、
「太らないように気をつけてきた結果」なのです。
体は、入ってくるエネルギーが少ないと、
自然と「燃費のいい状態」になろうとします。
だから、筋肉を減らしてでも、
少ないエネルギーで生きられるように調整する。
これは失敗ではなく、体の知恵。
そして、ここがとても大事なポイントなのですが、
筋肉量が少ない=一生痩せない、ではありません。
必要な栄養が入り、
腸がきちんとそれを受け取れる状態になれば、
体はまた「燃やせる方向」へ戻っていきます。
代謝は才能ではありません。
整えば、ちゃんと応えてくれるもの。
次のパートでは、
なぜ「食べないダイエット」が、
この状態をさらに長引かせてしまうのかをお話しします。
② 食べないダイエットが基礎代謝を下げてしまう
ダイエットで基礎代謝が下がる最大の原因。
それは、「食べなさすぎ」です。
これは精神論でも、甘やかしでもありません。
体の仕組みとして、はっきりと起きる反応です。
極端な食事制限が続くと、体はこう判断します。
実際、エネルギー制限を伴うダイエットでは、
体重減少以上に基礎代謝が低下する「適応性熱産生(Adaptive Thermogenesis)」が起こることが、
複数の代謝研究で報告されています。
「エネルギーが入ってこない。命を守らなきゃ」
この判断は、
あなたが意識するよりもずっと深い、
脳とホルモンのレベルで起きています。
すると体は、生き延びるために、
とても賢い選択をします。
- 消費エネルギーを抑える
- 維持コストの高い筋肉を分解する
- 甲状腺ホルモンや性ホルモンの働きを省エネ方向に切り替える
つまり、
ダイエットを頑張るほど、
基礎代謝が下がっていく
という、とても皮肉で、
でも体としては正解の反応が起きるのです。
わたし自身、20代の頃、
「食べなければ痩せる」と信じて、
何度も食事量を削ってきました。
そのたびに一時的には体重が落ちる。
でも、ある日を境に、
まったく落ちなくなる。
さらに怖いのは、
少し食べただけで体が戻るようになること。
あのときの体は、
壊れていたのではありません。
必死に、命を守ろうとしていただけ。
代謝が落ちたのではありません。
代謝を守るために、体がブレーキをかけただけ。
そして、ここで見落とされがちなのが「腸」の存在です。
食事量が極端に少ない状態が続くと、
腸に届く材料も減り、
吸収力そのものが落ちていくことがあります。
すると、
「食べていないのに痩せない」
「栄養を摂っているつもりなのに回らない」
そんな、苦しいループに入ってしまう。
だから、
食べないことを続けて痩せようとするほど、
体は“痩せにくい状態”を選んでしまうのです。
ここで大切なのは、
「もう十分頑張ってきた」と自分に認めてあげること。
体は、いつもあなたの味方です。
そして、正しく整えれば、
また安心して燃えられる状態へ戻っていきます。
次のパートでは、
なぜダイエットを繰り返した人ほど痩せなくなるのか、
その理由をさらに深く掘り下げていきます。
③ ダイエットを繰り返した人ほど、痩せなくなる理由
「昔はすぐ痩せたのに、今は全然落ちない」
この言葉、
これまでたくさんの女性から聞いてきました。
そして多くの人が、
「年齢のせい」「もう体質が変わったんだ」と、
自分に言い聞かせるように諦めてしまいます。
でも、ここではっきりお伝えしたいことがあります。
これは、年齢だけの問題ではありません。
何度もダイエットを繰り返すと、
体はそれを「経験」として、きちんと記憶します。
「また飢餓が来るかもしれない」
「次はもっと長く耐えなきゃいけないかもしれない」
実際、長期的な減量後も、
体重が安定したあとでさえ基礎代謝の低下が持続することが、
大規模な追跡研究で報告されています。
この“学習”は、
あなたの意識とは無関係に、
脳・ホルモン・代謝のレベルで起きています。
その結果、体はとても合理的な選択をします。
- できるだけ少ないエネルギーで生きる
- 脂肪を「非常食」として溜め込みやすくする
- 体重が減りにくい設計に切り替える
これは、
怠けでも、意志の弱さでもありません。
生き延びるための、極めて正常な適応です。
わたし自身も、
何度も「これが最後のダイエット」と思いながら、
食事を削り、戻り、また削る、を繰り返してきました。
ある時期から、
どんなに頑張っても体重が動かなくなった。
そのとき初めて、
「私はサボっていたんじゃない。
体が限界まで頑張ってくれていたんだ」
と気づいたのです。
だから、
痩せなくなったのは、失敗ではありません。
体があなたを守れるほど、適応した証拠。
そして、ここがとても大切なのですが、
この状態は、やり直せます。
体は一度覚えたことを、
「もう安心していい」と感じられたとき、
少しずつ手放していきます。
必要なのは、
さらに削ることではなく、
「もう奪われない」という安心を与えること。
食事、睡眠、腸、ストレス。
それらが整い始めると、
体はまた、燃えても大丈夫な状態へ戻っていきます。
時間はかかるかもしれない。
でも、あなたの体は、
決して裏切ってはいません。
このあとお伝えするのは、
その「守り続けてきた体」を、
どうやって痩せ始める体へ再起動させていくかです。
ダイエットで痩せなくなったのは、失敗ではない
体重が落ちなくなると、
多くの人が、胸の奥でこんな声を聞きます。
「もう何をやっても無駄かもしれない」
「私の体、壊れちゃったのかな」
わたし自身も、何度もそう感じてきましたし、
これまで出会ってきた多くの女性も、
同じ場所で立ち止まっています。
でも、ここでひとつ、
どうしても知っておいてほしいことがあります。
ダイエットで痩せなくなったのは、失敗ではありません。
実は、痩せなくなった時期こそ、
体が変わり始めているサインでもあるのです。
ダイエット初期は、
水分やグリコーゲン(体に蓄えられた糖)が抜けて、
体重がスッと落ちやすい。
この段階で「うまくいっている」と感じる人は多いですが、
それは本当の意味で脂肪が燃え始めたサインではありません。
その後、体は一度、立ち止まります。
それは、壊れかけた代謝を修復し、
「これ以上削られても、本当に大丈夫か」を
確認している時間。
体はとても慎重です。
一度、食事が極端に減った経験があると、
「また同じことが起きるかもしれない」と警戒します。
だから、すぐには体重を落としません。
痩せ始めるまでに時間がかかるのは、
体が怠けているからでも、
あなたを困らせたいからでもありません。
ただ、命を守るために安全確認をしているだけ。
この“沈黙の期間”を知らずに、
さらに食事を減らしたり、
運動量を増やしすぎてしまうと、
体はこう判断します。
「やっぱり、まだ危険だ」
そして、代謝はますます守りに入り、
脂肪を手放しにくい状態が続いてしまいます。
ここで必要なのは、
もう一段、頑張ることではありません。
「もう削られない」と、体に伝えること。
食事、睡眠、腸、ストレス。
それらが少しずつ整い始めると、
体は「燃えても大丈夫だ」と感じ始めます。
そしてある日、
あれだけ動かなかった体重や体の感覚が、
静かに変わり始める。
それが、本当の意味での「痩せ始め」です。
あなたの体は、
これまでずっと、あなたを守ってきました。
だからこそ、
ここからは戦うのではなく、
一緒に整えていくフェーズに入っていきましょう。
基礎代謝を「上げる」より「守る」食事という考え方
ダイエットの世界では、
「基礎代謝を上げましょう」という言葉を本当によく聞きます。
でも、長年ダイエットを繰り返してきた人ほど、
わたしはこう感じています。
多くの人に必要なのは、
これ以上“上げる”ことではなく、
“守ってあげる”こと。
特に、ダイエット歴が長い女性ほど、
基礎代謝はすでに十分、
無理をしながら頑張り続けてきています。
食事を減らし、
空腹を我慢し、
「これくらい耐えなきゃ」と自分を奮い立たせてきた。
その結果、体は痩せようとしなかったのではなく、
壊れないように踏ん張り続けていただけなのです。
だから、ここから必要なのは、
もっとストイックになることではありません。
体に「もう削らなくていいよ」と伝える食事。
具体的に言うと、まず大切なのはこの3つです。
✔ タンパク質が足りていること
✔ ミネラルが欠けていないこと
✔ 腸が栄養をきちんと受け取れる状態であること
どれか一つでも欠けていると、
体は「まだ足りない」「まだ危険」と感じ、
代謝を本気で動かそうとしません。
特に、腸の状態はとても大切です。
どんなに良いものを食べても、
腸が疲れていれば、
栄養は“あるのに使えない”状態になります。
これは、
「食べているのに痩せない」
「栄養を摂っているはずなのに回らない」
と感じる人に、とても多いパターンです。
また、食事量を少し増やした瞬間、
体重が一時的に増えることもあります。
ここで、
「やっぱり食べたら太るんだ」と、
すぐに引き返してしまう人がとても多い。
でもその増加の多くは、脂肪ではありません。
✔ 体内の水分量が戻った
✔ グリコーゲンが補充された
✔ 内臓が働き始めた
つまり、
代謝が動き出す準備が始まったサインなのです。
我慢をやめた瞬間、体は動き出す。
これは理論ではなく、
わたしが何千人という体を見てきて、
何度も確認してきた現実です。
食べることは、
太る行為ではありません。
正しく食べることは、
体に「もう安心していい」と伝える行為。
そこから、代謝は静かに、
でも確実に、目を覚ましていきます。
「痩せる体質になる方法」は代謝の再起動
「痩せる体質になりたい」
この言葉の裏には、
もう頑張り続けるダイエットを終わらせたい
という、切実な願いが隠れていると感じます。
まず、はっきりさせておきたいことがあります。
痩せる体質とは、
基礎代謝が生まれつき高い体のことではありません。
むしろ本当の意味での「痩せる体質」とは、
必要なときにはしっかり燃えて、
休むときにはきちんと回復できる体。
つまり、
無理をしなくても、自然に巡る体です。
長年ダイエットをしてきた人ほど、
代謝は「低い」のではなく、
ずっと緊張し続けている状態になっています。
アクセルを踏みっぱなしで、
ブレーキも同時に踏んでいるようなもの。
これでは、うまく進めないのも当然です。
だから必要なのは、
さらに刺激を与えることではなく、
一度リセットして、
本来のリズムに戻してあげること。
そのために大切なのが、次の3つの土台です。
- 食事で代謝を守ること
- 腸内環境を整え、吸収力を取り戻すこと
- 睡眠とストレスケアでホルモンを安定させること
どれか一つだけ頑張っても、
体はなかなか安心してくれません。
特に腸は、
「今の環境は安全かどうか」を判断する、
とても重要なセンサーのような存在です。
腸が整ってくると、
・食べたものがきちんと吸収される
・必要な栄養が、必要な場所に届く
・体が「もう溜め込まなくていい」と判断する
そんな変化が、静かに起こり始めます。
すると、
無理に頑張らなくても、
代謝は自然と“働ける状態”に戻っていく。
これは魔法ではありません。
体が本来持っている機能が、
ちゃんと使えるようになるだけ。
だから、
基礎代謝は才能じゃない。
育て直せる「状態」なんです。
これまでたくさん我慢して、
たくさん頑張ってきた体だからこそ、
ここからは、
削るのではなく、
整えることで痩せていく道を選んでください。
体は、
安心したときにしか、
本気では燃えてくれません。
でも一度、再起動が始まれば、
その変化は、あなたが思っているよりもずっと自然で、
穏やかなものになります。
よくある質問(FAQ)
Q. 基礎代謝が低い人は一生痩せませんか?
いいえ。基礎代謝は固定された数値ではなく、
食事・筋肉量・腸・生活習慣で変わります。
Q. 痩せているのに太りやすいのはなぜ?
筋肉量不足や、過去の食事制限による省エネ適応が原因のことが多いです。
Q. ダイエットをやめたら太りますか?
正しく整えれば、むしろ体は安定します。
問題は「やめ方」です。
Q. 痩せ始めるまでどれくらいかかる?
個人差はありますが、
多くの人が2〜6週間で体の変化を感じ始めます。
まとめ|体は、あなたを怠けさせたことなんて一度もない
基礎代謝が低い=太りやすい。
その考えが、あなたを苦しめてきたかもしれません。
でも本当は、
体はずっと、あなたを守っていただけ。
削られすぎないように。
壊れないように。
正しく整えれば、
体は必ず、また燃え始めます。
ダイエットは、戦いじゃない。
再起動の時間です。
参考文献・注意書き
本記事は一般的な栄養・代謝に関する情報提供を目的としています。
医療行為や治療の代替ではありません。
体調不良や疾患がある場合は、医師・専門家にご相談ください。
参考文献・注意書き
本記事は、基礎代謝・ダイエット・栄養代謝に関する
一般的な情報提供を目的としています。
医療行為や治療の代替を目的としたものではありません。
体調不良や持病、治療中の症状がある場合は、
必ず医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。
参考文献・引用元
-
Cleveland Clinic(米国医療機関)
Basal Metabolic Rate (BMR)
https://my.clevelandclinic.org/health/body/basal-metabolic-rate-bmr
-
WebMD(医療情報メディア)
What Is Metabolism?
https://www.webmd.com/fitness-exercise/what-is-metabolism
-
PubMed(米国国立医学図書館)
Basal metabolic rate and fat-free mass
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7435418/



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